POTATO 薬丸裕英 ボーイズラブ文庫


「さて。さっさと食事を済ませてひと勉強するか」。寝室へ向かっている東條に、引きずられまいと足を踏ん張る。

「食べたいんだろ。遠慮すんな」。コンテストまで二週間を切っている。けれど実はそのことで、誠巳を非難するようなことはなかった。と呼んでほしい。悲しみが深くて、眠れなかった。そんな男じゃないと思いたい。それを御子柴が抱き留める。

とため息をつく。

何を失ったのかを覚えているなら──そして失ったものが大きければ大きいほど──穿たれた傷口が癒えることはない。克彦もベッドに入ったが、眠ろうとしても眠れるものではない。「その顔は反則だ」。どうやっても、身体には匂いというものがある。再びスタジオに戻った椎名は、先ほどから黙り込んでいる耕平に、そう声をかけた。「思ってますよ…こんな場所を見つけ出すなんて…普通じゃない」。

「んんっ…んっんっ」。そうしたら自宅にご招待してくれたのだから、永田は全く怒っていなかったということだろう。「克彦……悪いけど、明日っからはしばらくホテルにでも泊まってくれ」。次の瞬間、望月は渾身《こんしん》の力で覆いかぶさっている厚い胸を押しやった。大崎や雨宮は二人の関係を知っているが、他の社員はよく分かっていない。美幸はしみじみ呟くと、彼の頬に自分の唇を押しつけた。黙っていると、男らしい色男なのに、なぜか高瀬は女にもてない。

「あ……、すまん」。「もうしばらく寝かせておくか。……そうだ。ついでだから、こいつが寝ている時に……」。那波にとって、今のこれがまさしくファーストキスだったのだ。なぜなら西脇は少しも笑っていなくて、苦しそうに見えたからだ。


ボーイズラブ小説作品紹介


4歳で海辺の町へ越してきた頃から、青海にとっては幼馴染の勇作が世界のすべてだった。美しく成長した青海は、観光客も訪れる地元の勇壮な祭りで、名誉ある花形・稚児役に選ばれる。しかしその事で、青海にはある忌まわしい出来事が降りかかり、やがて青海は、勇作を置いて町を出て行ってしまう……。

タイトル:海に還ろう
著 者 名:剛しいら
レーベル:ダリアmix文庫
発 行 元:ごじらん堂本舗

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